心の万華鏡  

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カテゴリ:作文( 11 )


2018年 02月 20日

あんた・・・・・

また あの家に行っていたのかい 仕方のない子だね

立て付けの悪い玄関をガタピシ言わせながら開けた俺の頭の上に 煮物の匂いと一緒にお袋の小言が飛んでくる

俺がまだほんのガキだった頃の話だ

坂を登ったところに建つ白い二階建ての家

二階にはバルコニーがあって その向こうに 白いカーテンが揺れている

俺はその家に行くのが好きだった

あんたは 坂道を駆け上がる俺を二階のバルコニーから見ている

boy 来たのかい

あんたは俺を見下ろしてニヤニヤ笑いながら言う

やれやれという具合に肩をすくめて 一階まで降りてきたあんたは玄関を開けてくれる

俺は よう!と片手を上げて まるで女の家を訪ねた男のように大股で格好つけて(自分では精一杯だ)部屋に入る

あんたは ますます ニヤニヤ笑を顔じゅうに張り付かせながら 俺を部屋に入れるために体を斜めにして迎えてくれる

可笑しくてたまらないと言う顔で

可笑しさの根源の俺を どこかで楽しんでいる自分も可笑しいと言わんばかりに。。。




boy 気取ってるねとか スカしてるねという顔をしながら

出してくれるのはミルクだけだ 真っ白いカップに真っ白なミルク とろりと泡立って。。。。。

俺がミルクを飲むのを向かいの揺り椅子にかけてじろっと見ながら あんたは やっぱりバーボンなんかを飲むんだ

それも一気にあおるように。。。。。

いや 日本のウイスキーだったろうか?

あんたは ウイスキーならバーボンさといつも言っていたっけな

あんたの目はいつだって俺を見ちゃいやしない

俺の頭の上を飛び越えて 白いかもめが群れ飛ぶ あの海の上をさまようんだ


おれはグラスを握りしめたあんたの手が震えているのを知っていた シワがいっぱいなのも知っていた

だけど そんなことは俺はあんたに言わなかった

俺はあんたの目が好きだった 青く透きとおって時にはその目が深い海のように緑色に変わるのを じっと見ていたかった

あんたは 時々 酒焼けしたしわがれた声で あんたの海の向こうの故郷(くに)の話をしてくれた

俺に話して聞かせるというより 独り言で 勝手に聞いときなという具合だったけどね

だけど あんたが誰かに聞いてもらいたがっていたことは ガキの俺にも解ったよ


父さん この子があの家に行くんだよ

夕飯(ゆうめし)の時 お袋は親父に俺のことを愚痴る

あんな家に行って!

親父は気のいい男だったが お袋にはいつもやり込められていた

まったく!!中学生になったばかりだと言うのに!!あんな女の家に入り浸るなんて!!

お袋は あんたのことを 汚い物のように言う

親父は もう行くんじゃないぞと言うけれど 俺は胸の内で また明日行ってやらあと悪態をついていた

あんな女ってどんな女なの?  俺は一度お袋の機嫌のいい時に聞いてみたことがある

お袋は内職の手を忙しく動かしながら お前みたいな子供の知るようなことじゃない!とピシリと言った

あの人はね 海の向こうから流れてきたんだ

ここへ住みついて アメリカの将校さんの世話になっていたんだ

そのどこが悪いんだろう?俺はわからなかった

将校さんがアメリカに帰った後 あの女は。。。。。。。

今ならわかる 俺にもわかる あんたがどうやって生きてきたか解る

そしてその「仕事」は生半可ではない事も。。。。。

あんたは食べていく為に 言わばプロフェッショナルとして仕事をしたのだ

それはあんたの人格とは何の関係もない事も 今の俺には確信的に分かる

ただ ガキの俺には なにか後ろめたいような気持ちがしただけで その他のことはわからなかったし 知ろうとも思わなかった

その頃の俺は あんたの家に行って ミルクを飲んで あんたの目を見て 話を聞いていたかっただけだ

椅子とかカーテンとか あんたの派手なドレスとか いい匂いのコロンとか 大きな額縁に入った絵とか

珍しいものがあるあんたの家は 俺には禁断の楽園みたいなものだったのだ

あんたは 古いプレーヤーで擦り切れたレコードをよく聞いていた

英語の歌だったが そのリズムは妙に心地よくそのくせ泣きたくなるような切なさも秘めていた

あんたは じっと目をつぶってその歌を聴きながら 涙をぽろぽろ流していたっけ

そんなあんたが とてもかわいそうに思えたんだよ

不意にあんたは 俺を振り返って いいかい boy 歌には人生があるんだよと つぶやいたんだね

あんたの胸の美しいペンダント 銀色のとてもシンプルな涙の形だった

そのペンダントの中を俺に見せてくれたね 

美しい本当に美しい女の人と 背の高い金髪の男の人が二人で抱き合っている写真だった

昔のあたしさ 

ガキの俺の目にも その写真の中の女の人の美しさは焼きついた

これが私の恋人だった人さ 結婚する約束をしていたけど 彼は戦争で死んじまったのさ

パチンとペンダントを閉じて胸の間に下げながらあんたは言ったんだ

その人のこと忘れたの?

忘れないよ でも忘れたよ

俺にはさっぱりわからなかった

あんたは 俺を子供扱いせずに対等に話してくれた

もっとも 説明なんぞはしてくれた事はなかったけど

わからなけばそれまでという感じで 私の言う事は解れよという感じだった





ある日 俺があんたの家にいた時 あんたは不意に立ち上がって表に出て行った

長身の男の人がいた 日本人だった

年は。。。。。。。あんたよりは上だったと思う

もう初老のその人は だけどあんたに言っていた

解って欲しい あなたを本当に好きなんだ だけどこのまま・・・・・・・と まるで少年のように言っていた

俺はドアの内側でその人とあんたのやり取りを聞いて みぞおちが焼けるような気がした

あんたは その人に 冷たく言い放ったのだ

いいかい よく聞いとくれ 

友達でいようなんて 何を生ぬるいことを言うのさ

all or nothing!! 

愛してくれないのなら いっそ憎んでおくれ!!  その方がずっといい!!

男の人は何か言うとあんたに近づいたけれど あんたはその手を振り払って 荒々しくドアを閉めたね

長い間 外の人はあんたを呼んでいたけれど あんたは返事もしなかった

ただ 大粒の涙を 後から後から流して声を出さずに泣いていたね

俺はなんだかあんたがとてもかわいそうで だけど 声を掛ける勇気もなく黙ってあんたを見ていただけだった

この時 初めて 俺はあんたを抱きしめたいと思ったんだ

そして そんなこと出来っこないガキの自分に腹を立てていたんだ

泣くだけ泣いてしまうと お気に入りの揺り椅子に腰掛けて 石のように黙ってしまったあんた

俺は あんたが何か言ってくれるのじゃないかと思って待っていたんだが。。。。

あんたの心は遠い異国をさまよい出した 

俺の存在なんかそこにないかのように。。。。。。

俺は 寂しいような 悲しいような 気持ちがした あんたを憎いとさへ思ったよ

今の俺には この時のあんたの気持ちがよく分かる

あれは本心じゃなかったんだろ?

本当は友達でもよかったんだ

せめて友達でいたい せめて関わりを持っていたいと言うあの人の気持ちはあんたは わかっていたはずだ

あんたも そう思っていたんだよね?

あんたもあの人が好きだったんだよな


好きでも どうしようもない事って あるんだよなあ。。。。



高校に進学した俺は 同じ年頃の仲間との世界が楽しくなって いつの間にかあんたの家にあまり行かなくなった

そして ある日 あんたはその白い家からいなくなっていた

寒い朝 トランクを一つ下げたあんたが赤いハイヒールを履いて駅に立っていたという噂を聞いたよ

北に向かったと言う人もいれば 港から船に乗ったのを見た言う人もいた

あんたは何処に行ったんだい?

俺があんたを尋ねなかったくせに あんたがいなくなった時 頼りないような 寂しいような 切ない気持ちがしたよ


しばらくは 街を歩く時 無意識にあんたを探していたよ





あんたの歳に追いついて追い越してしまった俺

あんたの寂しさとか 切なさが分かるようになったよ

あんたは 何も恐れず 誰にでも言いたいことを言っていたけれど。。。。。そう思っていたけれど。。。。。

本当は とても優しくて シャイだったんだね

心の中を見せるのが恥ずかしく 気を使われるのが嫌で 鎧を着ていたんだ 

それが あんたの優しさの裏返しだと解ったのは最近になってからだよ

あんたは 超かっこよかったよ ハンサムないい女だったぜ

この歳になっても あんたを思うとガキの頃の自分に戻る気がする。。。。。。


この海を見ているとあんたが見えるようだ

古いバルコニーであんたは海を見ていた 潮風にブロンドの髪をなぶらせながら

あんたの目は 海と空の遥かな境を超えて もっともっと先を見ているようだった






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趣味人さんありがとうございました

お写真を使わせて欲しいと 図々しいお願いをしたにもかかわらず 快くご承諾くださって感謝しています

私の妄想作文も 趣味人さんのこのお写真で少しはグレードアップできたのではないかしらと思っています

本当にありがとうございました

このお写真を撮影された趣味人さんのブログです



それでは!

柳ジョージ&レイニーウッド 青い瞳のステラ 1962年夏・・・・をどうぞ!!

音量にご注意願います



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by hanarenge | 2018-02-20 20:33 | 作文 | Comments(0)
2018年 01月 31日

揺れる心 





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揺れている 揺れている 

私の心 

揺れている





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線路は 心の軌跡のように続く


それは迷路にも似て




あの線路の一つを 例えば たどったら?


辿ったら・・・・・・・・・






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冬日の下で 線路はギラギラ輝いて 

私を遠くへ連れていく



お久の妄想詩作でした

この冬日は天文学的季語です (*´ー`*)

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by hanarenge | 2018-01-31 18:43 | 作文 | Comments(4)
2017年 12月 12日

新幹線とオムライス

新大阪 16;00ちょうど発の新幹線がホームに滑り込んできた

雄一郎は 片手に荷物を持ったまま 乗り込んで 座席を探す

車両の真ん中あたり 進行方向の左手に自分の座席no.を見つけ 荷物を注意深く網棚にあげ 席に座った

ようやくという気がして 思わずため息が漏れた

網棚の上の荷物は こじんまりとした着替えなどの荷物 そして 母の遺骨だ

母は一人で死んでいった 入院したと連絡が来て 慌てて駆けつけたが 雄一郎を待たずに 旅立ってしまったのだ



お母ちゃん お腹がすいたよ

もうちょっと待ってて お父さんが往診から帰って来はるから オムライス食べましょうね

雄一郎の一番古い記憶だ

大阪市内の下町で生まれた雄一郎は一人っ子だった

父親は開業医だ 先生に脈を取ってもらって死ねたら本望やと真面目な顔で言う患者も多かった

まだ日本が貧しい時代 医療費を払えない患者も多いが 父親は付けでいいよと患者には常々言っていた

年末に従兄弟や 学生アルバイトが 付けの回収に回るのだが 父親はここはもうこれくらいでとか ここは払われへんかったら無理に頂かんでもええからと細かく指示をしていた

ただしお金持ちの患者さんからはきっちりと頂くのが常だった

この下町で「 赤ひげ先生」なんて言われていた父親は 遅くにできた雄一郎にとても甘かった

母親は父親の恩師の娘で 根っからのお嬢さん育ち おっとりとした優しい人だった

大学を卒業して教室に残らず 早くに開業したのは 父親の子ども時代 医師が間に合わず亡くなった妹のことが心の中から離れなかったからだと 聞いたことがあった

お父さんはね 少しでもしんどい人のお役に立ちたい方なのよと 母親が教えてくれたのだ

雄一郎は 外では先生とこのお坊ちゃんと言われ 家中では母の愛と父の愛に包まれて大きくなったのだ

雄一郎が15歳になった春 両親が離婚した

父親にどうも外に女の人ができて それでずっと揉めていたらしい

今日からお母ちゃんと二人ですよ 母親はきつい目をして雄一郎に告げたのだ

どんな経緯があったのか 細かいことは何も言わない母親なので 詳しいことはわからなかった

どうにか落ち着いたアパートで慣れない暮らしが始まった

父からの援助も少しはあったと思うが 母親は何とか事務関係の仕事を見つけ やっと親子の生活が滑り出した

雄一郎が高校生になったある日 父親が雄一郎を引き取ると言ってきた

当然母は拒絶した
しかし経済的な理由から押し切られてしまったのだ

お母さんを一人にしておけないと言う彼に お父さんのところで勉強をしっかりして立派なお医者様になって欲しいと母は彼を送り出したのだ

父親の家は大きく豪華だった もう高度成長時代に入り医師会は力を持ち 開業医は儲かる時代になっていたのだ

新しい母親とは気が合わなかったが 父の手前 仲良くするしかなかった

従兄弟や従姉妹 叔父 叔母がしょっちゅう出入りしていた

もう誰も母のことを言う人もなく 新しい家で新しい生活に皆夢中になっていた

その事も雄一郎には 気にいらない一つだった

そんなある日母のことが話題に上った

いつも来ている父親の一番下の妹が 八重さんは いい人ができたみたいやねというのだ 八重とは母の名前である

そうかと父は ぽつっと言ったが 叔母は それがなあ どうも趣味の会みたいなんで知り合ったらしいで

いろんなところへ みんなで行っているうちに仲良くなりはったんやね

何だか棘のある言い方だった ー『そんなくらいで ええ人って言うなよ』ー

雄一郎は そうは思いながらも 何か嫌な気持ちが母に対して湧いてくるのを自覚していた

その話は それきりで終わって 二度と話題に上らなかった

雄一郎は2浪して医学部に入学し 毎日勉強に明け暮れていた

大学から休暇で帰る時も行く時も新幹線 その度にオムライスを食べた

彼が卒業を2年後に控えたその年 父親が亡くなり 残された後妻は家のお金を全て持って出て行ってしまった

元々余所余所しい間柄だったから ホッとした気持ちでいたが 医学部の学費には苦労した

何とか卒業して 病院に就職 あっという間に10年が経った

母親は雄一郎が一人前になって喜んだが 大阪を離れようとはしなかった

父親と別れて 初めてアパート暮らしをしたあのアパートに今も住んで 勤めていた

いつもキチンと片付いていたが 時々お盆がテレビの後ろにあったりした

あら ここに置いてたのねえ 笑いながら話す母を見ていて いつか以前に父親が言ったことを思い出したりした

お母さんはキチンとしているようで 妙に抜けているところがある
放っておけないんだと

放っておけないなら 何故 女を作ったんだと言いたかったが黙っていた

母がどうやら時々は一緒に出かけたりする人がいるらしいと言うことは 感づいていたが その事を改まって話す事も 母に問う事もなかった

時々出張などで大阪に出向く時は必ず顔を出すようにしていたが 母は相変わらず可愛らしい失敗をしては照れていた

母の入院していた病院に駆けつけた時 看護師が雄一郎に母の臨終の様子を話してくれた

ベッドの上からずっと一点を見ていた母は 突然にっこり笑って ある名前を呼んだと言うのだ

かすかな小さなその声は しかしとてもはっきりとしていたと

◯◯さん 来て下さったのね もうずっと一緒ねと

雄一郎の知らない名前だった

雄一郎は◯◯さんが父ではなかったことに 何か安心したような気持ちだった
(12/12 追記 雄一郎は◯◯さんが父の名前ではなかったことにホッとしたのだ 母を裏切った父をずっと思っていたのならあまりに理不尽だと思うからだ だから最後に父の名前をを呼ばなかった母に密かに拍手をしたい気持ちだった)

お母様がずっと大切に持っておられたものらしいですと 詰所で渡された物は

美しい模様の小さな小箱だった

中に何が入っているのか開けて見たい衝動に駆られた

僕の知らない母がここにいる

しかし 雄一郎はそうはしなかった

棺桶の蓋を開けて何を見ようと言うのか そんな気持ちだった

母の秘密は母だけの いや 母と◯◯さんだけのものかもしれないのだ

いや そうであってほしい

そう思った雄一郎はその小箱を母と一緒に煙にして送り出したのだ

雄一郎は新幹線の座席に座りながら 昔 子供の頃母と一緒に乗った時を思い出していた

ーお母ちゃん お腹すいた

ーあらあら もう?

ーじゃあビュッフェに行って何か食べる?

ーうん 僕 オムライスがいい‼️

ー雄一郎はオムライスが好きなんやねえ

母は優しい顔で笑った




雄一郎の顔が不意に歪んで 涙が溢れた
                                        了
       ***************************************************************************************************************************************

思いっきりベタですね

新幹線とオムライス
ビュッフェで食べるオムライス

結末は決まっていました

すみません意外性がなくてーーーー これでご勘弁を 笑

下町の赤ひげ先生のくだりはリアルなモデルがいます d( ̄  ̄)

書いていると憂さを忘れます

嫌な事も気にならなくなります

書くことは 私にとって慰めでもあるのだと思います

駄文を読んで頂いて有難うございました


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by hanarenge | 2017-12-12 07:03 | 作文 | Comments(6)
2017年 09月 28日

曼珠沙華は胸騒ぎの花

今までの妄想とは違います 少々陰惨です

おまけに長文です 

お嫌いな方 退屈やな〜〜と思う方はこのまま読まずにおかえりくださいましm(_ _)m

(ほんまは読んで欲しいのよ〜〜〜ん162.png 爆笑)



いつも裏木戸を開けて外に出る

そこは小さな空間だ

四角く小さい空が見える

知っている外と言えばこれだけだ

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今の季節は その前の猫の額ほどの空き地に真っ赤な彼岸花が揺れる

お陽(およう)は今日も商売の合間を縫って空き地を眺めていた

お店の中でも 売れっ妓とは言えないお陽が こうしてしばらく油を売っていても叱られることは稀だ

口うるさい女将もあまり目くじらを立てない それはお陽が気に入られているからではない

お陽は地味な女である あまり目立たないのだ

ただお陽をよく知ったら 彼女の無垢なところに驚くだろう

長い廓(くるわ)の生活でもスレていない雰囲気がある

ここは 男と女が出会う店 たった一夜の恋の花が咲く店なのだ

そう言うと何となく格好がつくが そうでも言わなけりゃやりきれないのだ

好きでこの道に入った者などいないだろう

大概が十(とお)になるかならないうちに 親から売られてくるのだ

お陽もそうして売られてきた 店の女将が無遠慮にじろじろ眺めて フンと鼻の先で笑った

器量は十人並みや言うとこやな まあいい しばらく使ってみようかえ

女衒の男は へい よう働きまっせとおもねるように言ってお陽をじろりと見た

お陽は慌てて よろしゅうおたのもうしますと教えられた通り小さな声で頭を下げながら言ったのだ

しばらくがどれくらいなのか お陽にはわからなかったが もしかしたらしばらく働いたら郷に帰れるのかもしれないと 一人 子共心に思ったのだ

「しばらく」を待つうちにあっという間に5年経った

ある日台所の片隅で 鍋をゴシゴシ洗っていると 女将が呼んでいると下働きの婆さんに言われた

慌てて居間に行くと お陽が売られてきたときと同じように長火鉢の前に座った女将がいた

まるで5年間そこから動かなかったようだ

お陽や ようお聞き 女将は妙に優しい声で話し出した

うちに帰れるんや!!お陽は思わず声に出して言ってしまった

とたんに女将は吹き出して あほやなあ この子ぉはと言ったのだ

お陽は何が何やらわからないうちに 丸裸にされて昼だというのに風呂に入れられた

ゴシゴシ洗われて 風呂から出されて鏡の前に座らされ こってりと白粉を塗られた

そしてたっぷりの紅をさされて 洗った髪も結い上げられて 真っ赤な長襦袢を着せられた

へえ!馬子にも衣装やねえ 女将や店の女たちに言われ こっちだよと手を引かれて連れて行かれたのは 女将の亭主の部屋だった

亭主はお陽をジロジロと舐め回すように見て 今日は丸屋さんがお見えや 

おとなしゅうしてあのお人の言うことは何でも聞くんやでと言うのである

何が一体どうしたのだろう 誰もお陽に教えてなどくれなかった

丸屋さんが お陽を好き勝手にしている間 歯を食いしばって「おとなしゅう」していた

ギュッと目をつむっているのでまぶたの裏は真っ暗だった そしてお陽はなぜか真っ赤な彼岸花が見たいと思っていたのだ

何もかもが終わった後 お陽は泣きに泣いた 

そうして女将に もうええ加減にしときと叱られたのだ

あんたの仕事はこれや これしかないんや

誰も何も教えてくれなかった

あんなことがあるなんて あんなことをされるなんて そしてそれが仕事になるなんて

お陽は幼い自分を思い出して 唇の端に冷たい笑いを浮かべた

あれからもう十年か 私も古株になったもんや

ホッとため息をついて お陽は立ち上がった 

今日も昨日と同じ日が繰り返される

一息入れたら 相手しなとお母はんに言われてお陽は客待ちの板の間に座る

女将はお母はん 亭主はお父はん そう呼ぶことには慣れた

客をとることにも慣れた もうお陽はあの頃の何も知らない女の子ではないのだ

お陽は超売れっ妓とはいかなかったが 少し寂しげな一重まぶたがいいと贔屓にしてくれる客もあった

お前は一重まぶたの裏で何を見ているんやと しつこく聞く客もあった

そんな時お陽は薄笑いを浮かべて へえ ようわからしまへんと言うだけであった

真っ暗なまぶたの裏に 故郷に咲く真っ赤な彼岸花が見たいと思うだけで 口にはしなかった

ひどく馬鹿にされるように思えたからだ

随分とひどい客もあった 無茶を言う客もあった 優しい客もいた 
冗談だったが 身請けしたいと言ってくれた人も一人くらいはいた

お陽の体の上を何人もの男が通り過ぎて行った

お陽は このごろひどくさみしい思いが募ることもあった

歳をとったということや 朋輩はそう言って慰めてくれたが



そんなある日 お陽はこの店は初めてだと言う客をとった

お陽より幾分若いその男は 他の客とはどこか違って 静かな人だった

お陽が お客さん。。。。と 促しても もっと話をしようというのだ

へえ それはかましまへんけど お金を払うてもらうのはお客さんやし。。。。

かめへん あんたと話してたいんや 

そうして男はお陽相手に色々な話をしたのだ

男は若い時に京都に来て 今は紙問屋の手代をしていると言った

わし 女子はんにこないに話したんはあんたが初めてや また来るさかいにな

別れ際に男はそう言った

お陽は それがただの戯れであることは承知しながらも なんとなく嬉しい思いで過ごしたのだ

三日も経たずに男はまたやってきた 
お陽が客と過ごしている時は 他の女には見向きもせず待っていた

そんな事が何回か続いたある晩 男の腕の中で夢かうつつかお陽は初めて真っ赤な彼岸花がまぶたの裏に咲くのを見たのだ

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笑われてもいいと思いながら 曼珠沙華の事を話したら黙って抱きしめてくれた

男はどこまでも優しかった  

お陽の心は 明るい太陽に照らされるように ほどけていくのだ

そうしてお陽は知らず知らず男に惹かれていった いや惚れたのだ


男の名前は与吉といった

やがて与吉はコツコツと貯めた金を持って お陽を身請して女房にしたいと店にやってきた

お陽は嬉しさのあまりに泣いた 
自分をそこまで思ってくれる人が本当にいるなんて信じられなかったから


お陽は売れっ妓ではなかったが 地味な女だったので借金も少なかった

女将はまだ稼げると渋い顔をしたが 与吉はしつこく食い下がった 

おとなしい与吉がこの時は一種の凄みさへ見せて 身請けを迫ったのだ

それはお陽も初めて見る与吉の姿だった

女将はその勢いに気圧されたように黙って納得した

身請け金はその場で支払われた 証文も与吉はきっちり取って改めた

そしてもう客は取らさないでくれ わかっているな!と女将にきつく言うと

部屋へと誘うお陽に 今日は忙しいんや 明日はお店の法事でな 終わったらすぐ来る 迎えに来るさかいにな  待っててや。。。。。肩を抱いて囁くのだ

そう言う与吉はお陽の良く知る与吉だった  そして優しい笑顔を見せて帰って行った

お母はんは あの人は堅気なんやろかと ちょっと気がかりな顔をしていたが。。。。

その晩はお陽は何十年かぶりにゆっくり部屋で過ごした

朋輩たちからは お陽ちゃん ほんまにええ人見つけたねえ 

与吉さん実(じつ)のある人やないの 嘘みたいな話やな なんぞ裏でもあるんと違うんか?

そやけどあんた幸せもんやと やっかみ半分ではあるが祝福されたのだ



あくる朝 瓦版が出た

何でも室町から新町辺り一帯の大きなお店に押し込み強盗が入ったとか
賊の一味が捕まった 逃げた者もおる 一味の親分の正体が解ったらしいで

島原の遊郭から新町までは少し距離がある

それに遊女は島原からは出られない

噂話で日が暮れた

おそろし話やな お店の人は無事やったんかいな お陽ちゃん与吉さんのお店も新町と違うんか?
まさか巻き込まれたりしてへんやろな あほ!余計なこと言わんとき

お陽は口には出さなかったが 与吉の勤めるお店が襲われたかもと思うと居ても立ってもおられない気持ちでいた

もう三日も音沙汰がない・・・・・

その夜は風が強かった 

まだ賊の一味が逃げていると言うことで 客は少なく 島原の大門も早くに閉ざされていた



その夜半過ぎ にわかに表が騒がしくなった

御用だ!!御用だ!!ジタバタするなという声が遠く近く聞こえてくる

二階の部屋の障子を開け放つと そこに見た光景は

お陽は一生忘れることはないだろう

遊郭の前の道に奉行所の高張提灯が幾つもさし出され その真ん中に髪を振り乱した男が短刀を持って立っていた

お縄に付け!!大人しくせい!!役人が寄ってたかって声高に怒鳴っている

提灯の明かりに照らされた男は。。。。。与吉だった!!

与吉というのは仮の名で 鬼面の半五郎という江戸の大盗賊だったのだ

(書いてて笑てもた このくだり まるっきし鬼平や 爆)

女を女房に仕立ててまんまと誤魔化すつもりであったろうがそうは行かんぞ!!

お陽は悲鳴を上げた 与吉さんが?! 盗賊!! 私を騙してたんや 人質みたいなもんや

与吉いや半五郎は お陽の悲鳴を聞きつけたのか くるっと向き直って 声を限りに叫んだ

違うぞ!!お陽!! 女房にしたい女はお前だけだ

お前に出会って俺は真っ当な暮らしがしたくなったんだ

真っ当な暮らしの為には足を洗わなくちゃならねえ 

俺は手下どもに知らねえ顔はできねえんだ

暮らしが立つようにしてやらにゃあよう

だからな 最後の大仕事ってぇわけよ

だがな!お陽 俺たちゃぁ 今まで ただの一人も他人(ひと)様を殺め(あやめ)ちゃぁいねえよ!!

与吉さん! 逃げて!早く逃げて!!

お陽の泣き声で与吉にわずかな隙ができた

捕手(とりて)が繰り出すタケヤリが与吉の首元に深々と刺さった

タケヤリが抜かれたから 与吉の首元から大量の血が吹き上がった

しゅうぅぅぅと音がした

真っ赤な真っ赤な血は天を向いてふきあがり やがて重力で下に向かって降り注いだ

それはまるで 曼珠沙華の花が舞うようであった

惨たらしいが 美しい光景でもあった

一切の物音が消えた

何もかもがゆっくりと回っていた

ああ 花が舞う 与吉さん 曼珠沙華が舞う 与吉さん

与吉は真っ赤な己の血を浴びながら お陽にまっすぐに笑いかけていた

そして赤く染まった地面に崩れ落ちた

一緒に!! 一緒に!与吉さん!!

お陽の記憶はそこまでだ

後は覚えていない



半五郎はお奉行所の目を逃れて逃げおおせていたと言うやないか

そやけどな あの男 何を思もうたんか島原の大門をこじ開けて遊郭に現れたんやて

よほど深いわけがあったんやろうな 惚れた女でもいたんかえ?

島原の女に惚れても仕方なかろうになぁ。。。。 アホなやっちゃ

京の街にこんな噂がしばらく流れて やがて消えた




後日譚として

京都町奉行所は面目にかけても 半五郎を捕えなければならなかった

だから 奉行所は鬼面の半五郎が島原に現れることに賭けたのだ(周到な探索の結果ではあるが)

そしてその目論見はまんまと当たった

半五郎も行けば捕まることを知っていたに違いない 

それでも与吉はお陽を見捨てては行けなかったのだ

与吉は針の穴のような万に一つの幸運に賭けたのだ

針の穴を通れたら お陽と二人 世間の片隅で真っ当に生きていこう 

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

あれから何年もの月日が流れ 京都はもう都ではなくなった

江戸は東京という名前に変わった

お陽の行方はもう誰も知らない 生きているのか死んでいるのかもわからない

今年も秋が来て 真っ赤な曼珠沙華があちこちに咲き始めた
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お陽のまぶたの裏で揺れた曼珠沙華

与吉とお陽の曼珠沙華

秋の日の幻のようでございました




まあ あれですわ
物語が終わってから言うのも何ですが
ちょっと追記します

与吉は追っ手を逃れて安全なところにいる
お陽の身請け金は支払い済み
そしたら 手紙でも書いてやって
お陽と落ち合う場所を決めて迎えに行くとか
あるいは信頼できる者を迎えにやらすとか
どうとでもできたのではないかという疑問が湧くが

当然 奉行所の監視が遊郭には張り付いているだろう

お陽は10歳になるかならないかで遊郭に売られた女だ
ある意味 純粋無垢なのだ
駆け引きも機転も上手くないと言える

そんな女に追っ手の目をごまかせとは与吉は言えなかった

与吉の保護なしでは 遊郭の外ではお陽は子供のように頼りない
だから与吉は自分が迎えに行くと決めていたのだ

与吉はお陽の無垢なところに惚れているのだ

まあ ぶっちゃけ 書き手の勝手にできることですけどね ^^
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私にとっての曼珠沙華は黒い背景に真っ赤に咲くイメージです

華やかなようで 哀しい花です
反面とても惹かれる花です

胸騒ぎの赤 窒息の赤 

どこか目を背けたくなるような物語を抱いている花なのです

陰惨なシーンのある作文になりました
長文にお付き合いくださって 本当にありがとうございました

お嫌いな方ごめんなさいね

曼珠沙華を思うたびにいつかこの花の話を書きたいと思っていました

私的にはこれしかありませんの

どうぞお解りあそばして^^なんちゃって

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by hanarenge | 2017-09-28 00:00 | 作文 | Comments(6)
2017年 09月 13日

片思いと初恋は

いつから始まったのだろう

もう古い話だ

都心へ向かう電車は満員御礼

いつもの事だが 明子は舌打ちしたくなる気持ちを抑えて乗るのだ

その日も同じような光景

ウンザリして横を向いた時 真正面の男性の胸に口紅をつけてしまった

明子の後ろの客が電車の揺れによろめいたのだ

明子は押し出されるような格好で見知らぬ男性の胸に顔を埋める姿勢になった

電車はその後大きく揺れて ブレーキがかかった

明子はますます男性にくっついてしまったのだ

グリーンノートとかすかなムスクの清潔な香りがするその人は 明子を守るように両腕でかばってくれた

真っ白いyシャツに口紅をつけてしまったことを謝る明子に 屈託のない笑顔を向けてその人は改札を出て行った

笑顔が印象に残った 目尻にちょっとシワがより それがとても似合っていると思った

一ヶ月後に明子は男性と再会した やはり満員電車の中だった

きっかけがきっかけだけに 二人で顔を見合わせて吹き出してしまったのだ

それから電車に乗るたびに密かに彼の姿を探すことになる

車両もなんとなく暗黙の了解で 口紅事件のあの車両になった

そしていつしか電車の時間が楽しみになっていた

だって あの人も私を見つけてとてもうれしそうな笑顔で やあ 今日は乘っていないのかと心配しましたよなんて言ってくれるようになったんだもの

やがて明子はあることに気がつくのだ

それは ひっそりと心に入り込み ある日突然姿形を伴って 

そしてはっきりと きっぱりと そこに住み着いたのだ

そうしたら もうその人のことしか思わなくなる

毎日 ドキドキして 

でも どうにもならないことは はっきりとわかっている

だって あの人は他人のもの 家庭があるのだ

私のものには永遠にならない

告白なんて夢のまた夢 そっと物陰から見ているような気分なのだ

彼はもう若くはない 私の割り込む隙など皆無だと言って良い


通勤電車で顔を合わして 面白い話をするけれど。。。。。それは。。。。


私は本当の気持ちをとても上手に隠しているから

きっと気がついていない

気がついて欲しいと思う事も もちろんある

だけど その反対に 私の気持ちがもしあの人に知れたら もう絶対に顔を合わせられないと思うことも事実だ

明子は 冷めたコーヒーを飲み干して自分の苦々しい気持ちをごまかす

幾夜泣いたことだろうか 辛いとかいうのではなく なぜか透明な涙が湧き出てくるのだ

そして普段は聞かない むしろ嫌いな恋の歌なんか聞きたくなる

やばいぞ 明子は思う これは本当にもうやばいぞ

早くなんとかしないと私はやばいことになる

この頃は やばい自分を妄想する始末

なんとかこの思いを始末しないと 

まるで熱いトタン屋根の上の猫のように追い詰められて 背中を逆立てているような気分だ

トタン屋根は爪が立たない このままズルズルと落ちていくのか それは絶対嫌だ

どうすればよい?

電車に乗らないでおこうか もっと遅く行こうか

それは。。。。。。いやだ

どっちつかず 宙ぶらりんの気持ちのまま 明子は電車に乗り続けた そして彼と馬鹿話をした

あれから2年 二人は数え切れないくらい同じ電車に乗った

数え切れないくらい話をした

そしていつの間にか 帰りの時間を合わせ 時々途中の駅で降りてお茶をするようになった

もちろん明子は 自分の中の大事な気持ちは微塵も出さなかった(はずだと自負している)

明子は会社の仕事の悩みなど少しづつ話すようになり (まあ それはたわいない話なのだが)
彼は ちょっと眉をしかめながら でも目尻に優しいシワをたたえて話を聞いてくれた

たまに ごくたまには彼が家の話をした

明子は悪いとは思いながら 彼の家庭の話は身を入れて聞かなかった

なんでも知りたいと思う反面 彼の家庭のことなど聞きたくなかった

そんなある日 彼がポツリと言ったのだ

もっと早く会いたかった もっと若いときにあなたに出会いたかったと

明日の天気の話でもするようにサラリと何の気負いもなく繰り出されたその言葉 言わんとするところ

胸の奥がコトリとなった そうして激しい動悸がした

顔を上げたその前に 笑っていない彼がいた (知っていたのね 私の気持ちを) 

しかし 明子は笑ったのだ 大きな声で 少し演技も混ぜて笑ったのだ

笑わなければいけないような気がしたのだ 笑わなかったら どうなる?

今度は誰にも押されずに彼の胸に包み込まれるようになるのかもしれない

それはとても魅力的なことのように思えたが  実際 白状するなら明子はそれを望んでいたのだ
悪魔的な誘惑だ

でも・・・・・・・・

明子の笑い声に傷ついたような ホッとしたような彼の顔

つられて笑い出した 二人であはは あははと笑った

どうもいけないね 照れくさそうな彼は じゃあと言って帰って行った

明子は彼を見送りながら 自分の中で一つ扉を閉めたような気がした

それは寂しいことだけれど その反面 緊張が解けていくような安心感に包み込まれるのを感じていた

明子は少々強引ではあったが なんとか 自分の気持ちを安全地帯に着地させたのだ

もうやばくない 明子はホッとしていた

そして 明日からは電車の時間を時々は変えようと思っていた

時々時間を変える事を彼にも言おう

彼もきっとそれがいいと思うはずだ

明子の心の中で彼は優しい憧れになったのだ

もう悩まなくてもいい 

そう思うと 急にケーキが食べたくなった

友人に電話をして お茶をしようと誘った

何よ 久しぶりね いい人でもできたの?友人は揶揄った

それが全然よ〜〜〜〜 

明子は弾けるような笑顔で答えていた

雑踏の中を友人と二人で歩きながら 明子は本当に嬉しくて楽しかった 


あれから3年  

明子は明日お嫁に行く

相手の人は寡黙な人だったが 笑顔が良かったのだ 

そしてグリーンノートとムスクの香りがしていた

それだけで結婚を決めた明子だが きっと幸せになれると確信していた

あれから 4〜5回あった電車の彼は そのうち 電車に乗らなくなった

きっと定年退職したのだろう 最後に電車で会った時 そんな話をしていたもの

明子の心の中で 電車の彼は初恋の人のようになった

その人を思うだけで 心が温かくなるような気がする・・・・・・・

明子はもう会えないその人に そっと結婚することを心の中で告げた

私幸せになります あなたもどうぞお元気で ありがとう そしてさようなら

でも でもね 私はあなたをずっと覚えています あなたへの気持ちをずっと覚えています

それが 私にとっての片思いと初恋です

明子は 久しぶりに透明な涙を流した


久しぶりに妄想しました^^ 全開です

少し文章を訂正しました 9/14
だいたい アップすると直したくなるのです ご無礼つかまつった^^

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by hanarenge | 2017-09-13 22:43 | 作文 | Comments(4)
2017年 06月 23日

幾千もの夜を越えて

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いつの頃からか 遠いところから 声が聞こえる

気がついたら 耳の中で木霊していたのだ

それは 地の底から響いてくるようでもあり あの青い空から落ちてくるようでもあり

初めは戸惑った

何の前触れもなく 不意に耳元で声がするのだもの

小さな甘い声 だけど 何かとてもつもない力を秘めているようなその声

何故?なぜ?私なのか どうして聞こえるのか

そんなことを問いかけても答えなど有りはしない

ただ 耳元で 囁くように 言うのだ

1日に1回 それは始まったのだ

だんだんと私は それに 慣れていった

耳の中で声がするという現実を 信じられなかったのかも知れない

どうかしたらその声はピタリと止んで 長い間聞こえないこともあった

そしてまた 不意に始まるのだ ちょうど音楽でもかけたように

そのうち 言葉は同じことを繰り返すようになった

もうすぐです もうすぐ 待っていてください

何がもう直ぐなのか 何を待つのか 私はぞっとした

もうすぐ やってくるのか?

待っていろとは?

初めは怖かったが やがてそれにも慣れた

そしてそんなことは頭の隅に追いやって やがて忘れてしまった

声が聞こえても 深く考えず 無視していた もちろん声はいつも一方通行で 何を問いかけても答えなど返ってこないのだが

だから安心していられたのだ

現実に存在しない世界の声だから

私のどこかがちょっとおかしいのだろう それくらいにしか思っていなかった

しかし

そうではなかった

私はある夜 その声を聞いて 突然思い出したのだ

思い出すというより 遺伝子レベルでの遠い遠い記憶を 探り当ててしまったのだ

もう遥かな遠い遠い過去

いつの時代かも定かではないが

私は その時代 確かにそこに存在していた

今の私ではなかったが 私だったのだ

一旦探り当てた記憶は 日に日に鮮明になっていった

頭の上で鳴いていた雲雀 足元の草の芳しい香り

そしてその時の暖かい日差しと あのひとの声

遠い山はキラキラと輝いて 雲はやはり真っ白に浮かんでいた

そんな細かいことは映画のように目の前に現れるのに あのひとの顔だけが思い出せない

長い髪を無造作にかきあげる白い手まで見えるのに 思い出せないのだ

そして 私は目の前の人との関わりも思い出せなかった

どんな関係だったのだろう わたしとこのひとは

ただただ だまって見つめるだけの自分が見えていた

そして 今 声は言うのだ 待っていてと もう直ぐだと

私は心が躍った その反面 恐ろしかった

いったいあのひとはやってくるのだろうか

くるとしたらどこから?あの遥かな時代から?

そんなことがあるのだろうか

そして もう直ぐとは?どれくらい直ぐなのだろう

笑い話ではないけれど 考え始めたら眠れない

もう声はすぐそばまで来ていそうに聞こえる 

早く!!早く来てくれ!

私は今では懇願するようになっていた

暗く風の強いある晩

激しくドアが揺すぶられた そして かすかなノックの音

それはだんだん大きく 確固たる意志を持った音に変わった

ああ!とうとう!来たのだ

私はあの女(ひと)の顔を思い出そうと心を躍らせたのだが

不意に 不意に ある考えが心に浮かんだ

私は 仇かもしれない もしかしたら

そう もしかしたら 

そのものは 私を殺しに来たのかもしれない

不意に 首筋がぞわりとした

ドアはますます大きくノックされて このままでは突き破られるのではと思えた

声が聞こえる それは耳の中からと ドアの外からだ

躊躇しながら 私は一歩足を進める

開けなければいけない 閉ざしてはならない 意識はそう命じている

ドアに手をかけて 

ああ 開かれていくドア

やけにゆっくりと

暗い外に立っていたものは  

幾千もの夜を越えて 私の元にやってきたものとは???

(妄想中)

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by hanarenge | 2017-06-23 14:15 | 作文 | Comments(4)
2017年 05月 11日

悲しきフランケンシュタイン

稲妻と嵐 叩きつけるような雨 

暗い研究室 そこには多種多様な機械が並べられて そして大きな水槽のような箱が

いや、それは棺桶なのだ

人が3人以上は入るだろうと言うような棺桶

この嵐の深夜に ここから這い出ようとしている物がいる

なんだろう 暗くて見えない 

じっと目を凝らして見ると その物は、、、、、、

いや 者だ 人だ しかし・・・・・・・

そいつはとても背が高い そしてその顔は ああ!その顔は

醜い縫い目が顔じゅうを覆っている

そいつは身体中を、縫い合わされているではないか

なんという醜さ なんという恐ろしさ

しかも、その傍らに立つ一人の男が、とてつもなく冷徹な目をしてそいつを眺めている

嵐の夜に呪われたかのように生まれた 一人といっていいのかどうか 怪物だ 

この怪物の生みの親は フランケンシュタイン博士

こうして怪物の人生(と、よべるかのどうか)は、始まったのだ

怪物にとっては、親にも等しいのがフランケンシュタイン博士だ

しかし博士は彼を呪われた者として扱った

純粋に興味本位で作り出したのだ

私も初めは怪物が恐ろしかった 不気味で見るのも嫌だと思った

しかし ・ ・ ・ ・ ・

なぜ 彼を造った?

何故? 何故? 憎むためか? 追放するためか?

愛もなく 何故造った?怪物は問うのだ

答えられるか?お前にわかるか?この俺の悲しみと、むなしさを。

青文字はWikiからの抜粋です

醜怪な身体の中に幼い子供が閉じ込められているような、そんなアンバランスな存在をデ・ニーロが作り上げていき、新しいフランケンシュタインのクリーチャーとなった

そうなのです 見ていると、この怪物が小さな子供のようにも見えるのです

その無邪気さと醜悪さ そして愛されない悲しみ 愛したい気持ちの空回り デ・ニーロは上手く演じました。

ケネス・ブラナーもヘレナ・ボナム・カーターも、すっ飛ばして、デ・ニーロに引き込まれました。







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by hanarenge | 2017-05-11 00:25 | 作文 | Comments(0)
2017年 04月 25日

私の桜物語

桜も気がつくと終わりましたね

みなさんの今年の桜はいかがでした?

心に残る桜と巡り会えましたか


花の季節は心がざわざわとしてくる

坂口安吾が 「桜の森の満開の下」の傑作を書いたのは有名です

彼の心にも満開の桜が妖しく揺れていたのでしょうか

作家というものは、見かけがどうであれ心の中に狂気を抱いているものだと私は思っています

いや 私のことではありませんよ 笑 作家じゃないしって言わんでもわかってるよね 爆笑




ショート ショート 「桜と女」を書いていますが どうにも筆が進みません

妙な方向に筆が滑っていきます

こういう時は無理に書くと必ず失敗します(と、言い訳 笑

書けないかもしれません



代わりにと言っちゃあ何ですが。。。。。。

私の故郷の桜と 心に深く残る桜のことを 書こうと思います

私の心に咲く桜は山桜

ソメイヨシノではダメ あれは退屈な桜だ


私の故郷は深い山の中 

と言っても 子供時代は美しく手入れされた棚田と畑 雑木林と山林が広がる里山だった

私はレンゲが咲く田んぼで遊んでいる

暖かい光は野にも山にも満ちて、向かいの山の影が濃い

風もないのに白い山桜が私に降ってくる

ちょっとした広場が上にあり そこに樹齢何百年かの山桜の古木があるのだ

ひらひら はらはら 桜が舞い落ちる 私はレンゲを摘むのに忙しい

いつの間にやら風が出て 花びらはますます落ちてくる

私の頭の上にも、田んぼの緑の草の上にも白い花びらが舞い落ちる

目をあげると 陰影の濃い向かいの山が見える そこにも山桜の古木がある

谷風に花びらが舞うのが見えるのだ

谷風が山肌を縫うように上がっていく その風が桜に到達すると しばらく時間をおいて花びらが舞うのだ

私の頭の上の桜と山の桜は まるで呼応するように花びらを散らしている

私はレンゲ摘みをやめて それをじっと見ている 多分小学校に上がるか上がらないかの私の桜の記憶です」


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もう一つ 忘れられない私の桜

静かな静かな風のない夜

満月だった

道が煌々と光っているように見えた

山道を走っていた私は 思わず車を止めて降りてみたのだ

満月の夜は銀色の夜だった

柔らかい月の光は 山も道も草もなにもかもを銀色のベールで覆っているかのようだった

そして、暗いはずの山の端は薄い青色に煙って見えるのだ

夜はこんなにも華やかだったのだ 

銀色の光が溢れる中で 一本の桜が花びらを散らしていた

風もないのに、我と我が身を震わせるかのように その桜は花びらを散らしていた

桜の花びらは月の光を受けて真白く輝くのだ

あるかないかの風に乗るように桜の花びらは しばらく木の周りをひらひらと舞っている

そして静かに落ちていくのだ 

私の目にはその落ちていく一枚一枚の花びらが 行く春を惜しんでいるかのように見えた

一生に一度見るか見ないかというような光景でした

満月の夜 花びらが舞う 

月明かりの下で静かに春を舞う

私はどれくらいそこに立っていたのでしょうか

どんなカメラにも捉えきれない美しさと広がりがそこにありました

私の忘れられない桜です

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by hanarenge | 2017-04-25 00:14 | 作文 | Comments(0)
2017年 03月 19日

あなた

眠れぬままに

心に浮かぶのはあなたの事

あなたと出会い あなたと歩いた日がよぎっていく

とても好きだった 心の底から好きだった


何処が?とあなたは聞いたけど 答えを探すふりをして 黙ってあなたを見つめた


あなたの全てが好きだなんて照れくさくて言えなかった


あの日 あなたは突然出て行ったね

深く考えもせず 雪の降る街を見ていたんだ

だんだん時間が経って いくら何でもこれはおかしいのではと突然 やっと気がついた

あなたがやりかけたことがいっぱいあって あなたがこんなに色々なことをしていたんだなあって 胸を突かれるような気持ちでいたよ


あなたの好きなサボテンが ポツンと窓辺に置かれていたね

可愛がっていたサボテン

あの日 冷たく暗い部屋で膝小僧を抱きしめながら あなたは去ってしまったのだと

泣きたい心で思ったよ

この心が晴れる日は来ないと思ったよ

お元気ですか?

あれから後で 結婚したんだ

僕の奥さんはあなたには似ていないけど あなたのように洗濯が好きだよ

もう随分と昔のことだね

あなたと街でばったりあったらわかるかしら?

相変わらず 少し笑いを含んだ目で僕を見てくれるかい?

何の屈託も無く 笑ってくれるかい?

きっとあなたのそばには 素敵なご主人がいるのだろうな

あなたを忘れない僕を この頃少し嬉しいんだ

今更 どうという事もないけれど あなたを好きだった頃が一番生き生きしていたのかもしれないね

僕の奥さんが 僕を呼んでいる

もう行かなきゃね 可愛い人なんだよ 幾つになってもね

あなたが好きだったサボテン 僕が世話をして花を咲かせたよ

驚いたでしょう?花が咲くなんて

僕はあの頃サボテンが咲くとあなたが帰ってきてくれると思って 一生懸命世話をしたんだよ

僕の願いは聞き届けられなかったけど あなたの代わりに僕の奥さんが来てくれたんだよ

よかったよね?

あなたも きっと喜んでくれるよね?

あなたが うんと幸せでうんと綺麗で うんと笑っていることを願っています





もうお分かりですね これはチューリップのサボテンの花の妄想です 笑笑

題名をストレートにサボテンの花としなかったのは あなた様をちょっとドキッとさせたかったから
ちょっとホホーッと思わせたかったから
あなた様は 私の作文を読んでくださる ネットの海の見知らぬたくさんのあなた

もしちょっと戸惑って 読んでくださったのなら 私の小さな成功です

有難うございました

iPadからだと サボテンの花 の貼り付けが上手くいきません

時間ができたら パソコンから試みて見ます

良い歌ですよね この前iTunesで買いましたよ

そればかり聞いています だから妄想もふくらんだのでしょうね

お付き合いいただいて有難うございました







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by hanarenge | 2017-03-19 01:20 | 作文 | Comments(0)
2017年 03月 08日

黄昏のビギン 第2バージョン

今日は風が冷たかった 

その中を梅田まで

30年来の友人と映画を観るために

私は切なくならないといけない訳があるのだwwwwwww

切なく悲しくならないと いけない

友人に話すと大笑いしていた

その訳は 黄昏のビギンを書くためだ

そんな要らん前置きは横に置いといてさっさと幕あけろやって声も聞こえそうだが

PCやスマホの前のそこなあなた方!!仰せに従いますわよ 期待はせんといてほしい!!

「マリアンヌ」

ブラピが青年の面影を蘇らせていた
マリオン・コティヤールは美しかった 
モロッコの砂漠の夜明けは薄いピンク色に染まっていた


黄昏のビギン 第二バージョン
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by hanarenge | 2017-03-08 20:34 | 作文 | Comments(0)