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心の万華鏡  

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2017年 03月 03日

黄昏のビギン

私は 日本の歌謡曲はほとんど聞かない 

ほとんど聞かないという割には、洋楽だってそんなに知らない

でも、この曲だけは好きだ(いや厳密に言えばもっとあるんですよ 真夏の果実とか^^)

ちあきなおみがこの名曲を歌っていた 囁くような歌い出し(だったかと)

素敵だなあと思って iTunesで探したが、ない

瞬くして 原曲の水原弘の黄昏のビギンを聞いた

ちあきなおみよりやっぱりいい 彼女のは甘すぎる

🎶雨に濡れてた 黄昏の街 あなたと会った初めての夜 

彼の少し甘い声が軽いリズムに乗って流れ出す

洒落てるなあ 歌詞も曲も

こんな曲、今あるかしらね

大人の鑑賞(とは言わない?)に耐える曲の一つだと思うのだけど 如何かしら

ずっとElvisとか、ブルース・スプリングスティーンとかニール・ダイアモンドとかライチャーズ・ブラザーズとか

他にもいっぱい^^洋楽を聞いてたんだけど

明日から これ当分聞きそうです 
水原弘は42歳で亡くなったのねえ Elvisも42歳だった

水原弘と聞いても、知らない人が多いのだろうなあ  彼は上手いと思う。

こう言うと 古い!とか渋い!とかいう人がいる

大きなお世話だ




以下私的妄想全開

読みたくない人は立ち去ってくださいませ

黄昏のビギンの歌詞がいいと書いたが これが実に映画のワンシーンのようにいいのだ

そこで物好きの私は このビギンの二人の今後を想像したと言うわけ


彼女と初めて二人だけで会ったのは、雨のこの街 まだ夏になる少し前の季節

彼女は 無理をしてきてくれた

たった一回の二人だけのデートだった

彼女の髪は雨の匂いと彼女のつけている香水の匂いが混ざっていた

二人で歩いた街角 飲んだコーヒーの香り 彼女の手の温かさ 柔らかさ まるで昨日のように蘇る


もう分別のある年齢になり社会的にも成功した彼、家庭では良き妻が待っている

妻には何の不満もなかった、妻を愛していると自負していた(妻以外にも付き合っていた女性はいたが)

年齢より幼く見える妻は よく笑いよく泣き よく食べ 可愛い息子と娘を彼に与えてくれた

娘も息子もようやく独立して 今は夫婦二人暮し 相変わらず妻はよく笑った 彼も笑った 

妻は夫との二人暮しが楽しいようだった


そん彼が出会ったのが 彼女だったのだ 

色が白く、背が高く、柔らかそうな栗色の髪を長く伸ばしていた

瞳は妻とは違い 切れ長の目尻の上がり気味の少々きつい目をしていた

そんな彼女が笑うと、途端に顔じゅうがくしゃっとなり まるで童女が現れたようになる

仕事の関係で5年前に初めて会った時 何かのことで彼女が笑ったのだ その時彼の胸で何かが変わったのだ

それから更に一年が過ぎた頃

初めてのデート 

朝が来て 別れの時が迫る時 彼女は彼に背を向けて泣いていた

彼はそんな彼女を抱きしめて思った 

いろいろな女性を知ってはいたが(友人もいたし秘密の恋人もいた)

どうしても一緒にいたいと彼が強く思ったのは 彼女だけだった

彼女にも家庭があった 夫と二人だった

私はきっとあなたのところへ来るわ だから この街で私を待ってほしい

妻には隠さず告白した そして俺が悪い 別れてくれと言った 今後のことは俺に出来るだけのことをする
身勝手は重々承知だった

妻には殴られた 泣かれた 罵られた 納得のいかない妻の嵐のような攻撃に耐え やっと身一つで家を出たのが3年前だった

毎年、彼は約束の日には街に来て 彼女を待った 

そしてコーヒーを飲み 彼女のことを思っていた

そんな彼が家を出たその日に偶然目にしたニュース 大事故だった

首都高速で何重もの衝突事故が起こり 大勢の人が怪我をしたり 亡くなった

交通事故など今は珍しいものではない しかしこれは大きな事故でニュースになったのだ

明日は約束の日。心が躍っていた、彼女からあなたの元へ行くと連絡が入ったからだ 夫がやっと離婚に同意してくれたと。

上の空でニュースを聞き秘書に明日からしばらく休むから君も休暇をと勧め、だけど会社を辞めないでくれよと冗談を言ったのだ

顔を上げて何気なく見たテレビには彼女の顔があった

事故の原因は 一台の車が突然ハンドルを切って壁に激突 炎上 あとは次々と衝突した

遺体は見分けがつかないくらい焼けていたと

ブレーキ痕もないことから、突然の病気かそれとも。。。。。

ニュースは耳に入らなくなった テレビの彼女の顔が笑っている そしてだんだんゆがんでぼやけた

殺されたのだ 瞬間彼はそう思った 夫に殺されたのだ よその男にやるくらいなら 連れて行く 無理心中だ

それからの記憶はない ただがむしゃらに働いた 心の中では慟哭しながら 

自分が殺したようなものだ 後悔にさいなまれた

あれから どれくらいの月日が流れたのだろう 彼は相変わらず毎年この街に来ている

もう待ったからといって 彼女が来ることはない 

二人であったのはたった一回 あれっきり 

彼女の葬式にも行けるはずはなかった ツテをたどって葬祭場を調べてもらい 地味なスーツで 遠くから遠ざかる黒塗りの車を見送っただけだ

心が死んだような気がして生きてきた

彼は、自分はもう多分心から笑うことはないだろう そして何を聞いても涙を流すことはないと感じている

彼が周りから冷たい男だと言われているのは知っている だけどそれがどうしたのだという気分だった

もうどうでもいいのだ この息が止まるまでただ生きていくだけだ
 
そんな投げやりな暗い想いをずっと心に抱きながら表向きはバリバリ仕事をしていたのだ

ただ秘書だけは彼の本当の姿を知っていた 彼女の助けなしには彼はここまで来られなかっただろう

その点 深く感謝している。

彼が座ったカフェの椅子は外だった 不意にあの香りがした 彼女のつけていたあの香り

彼は思わず立ち上がりそうになった 夢なのか現実なのかわからないが、彼女がそっと手を伸ばし彼に触れたような気がした 

しばらくして、店員が、彼のところに来た お客様 お客様 

返事はなかった 彼の右手は まるで誰かの手を握っているような具合に見えた

そして彼はもう息をしていなかった。

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もう一章 ハッピーエンドも考えたのですけれどね
まあこれはこれで、ある意味ハッピーかなと え?意味不明 すみませんね 私の頭ではそうなるんです

な〜〜〜んか平凡ですね

このビギンで連想する彼女は 佐藤友美 です
佐藤友美ったって知らない人多いでしょうね どんな人って?都会的な人です 笑うと口元がちょっと歪むというかシワが寄るというか  好きだったなあ彼女

あとは 寺島しのぶかしらねえ  どうでしょうかねえ

by hanarenge | 2017-03-03 20:31 | 作文


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