心の万華鏡  

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2010年 11月 24日

私の故郷 (覚え書き)

今年の紅葉は 見事です
私の町の大きな銀杏も 松明が燃えているように金色の光を放っています

久しぶりに実家に行ったので 荒れ果てた田んぼを写しました
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山の形は変わっていないのに 景色は見事に変貌しました

ススキが生い茂る所は田んぼでした
杉と檜に覆われた山はもっと規模が小さく 棚田が並び 畑があり 秋には紅葉で染まる雑木林がありました

春には 杉山に古木の山桜が見事な花を咲かせ 暖かい光に満ちた谷にヒラヒラと白い花びらが散るのが見えます
谷から上がってくる風に花びらはいつまでもいつまでも白く輝いて 舞っているのが見えるのです

桜は麓の村から 谷筋を駆け上がるように咲いてくるのです

レンゲの花の咲く田んぼに寝転ぶと 顔は暑く背中は草で冷たく 耳元ではレンゲ畑で蜜を集めるミツバチの羽音が眠気を誘うように鳴っていました

夏には あの山に雲が湧くと雷が鳴り始め夕立が駆け下りるように迫ってきました

乾いた土に黒い円をつけるように大粒の雨が落ちて来て あっという間に白い雨の煙りが立ちこめて
山も畑も見えなくなるのでした

夕立の後は木も草も きらきらと眩しく光って 草の匂いが濃く立ち上り 涼しい風が吹き抜けて行くのです
稲が青い葉を茂らせる六月の夜には 翡翠色をした蛍がゆらゆらと空へ登って行くのです

そしていつの間にか空気が澄んで 山は色とりどりの葉に覆われ 短い里の秋がはじまります

空は青く高く澄み 刈られて干された稲はチリチリと音を立てながら乾いていき 甘い稲藁の匂いを
漂わせます
夜空は星が瞬き 満月の夜は 銀のベールをかけたように月光が降りそそぎ 庭の葉にも銀の滴がおります
冷たい庭には 虫の声が聞こえ 夜はひっそりと更けていきます

ある朝突然に真っ白い霜が降りて 息が真っ白に見えるともう冬になっています
今よりも もっと寒かった山里に 静かに雪が降り始め それは 日を追うごとに激しくなりやがて
白い厚い布団のように 野も山も田も畑も覆い尽くしていきます

雪がやむと 決まったように太陽が顔を出し 里山は眩しいくらいに輝いて見えます
葉を落とした林に中には 小さな足跡が付いていて 真っ赤な藪こうじの実が鮮やかに見えます

春 夏 秋そして冬 子供達は何かしら楽しい事を考えたり見つけたりして遊ぶ事に余念がありません
野に出れば 大抵のものは見つかるのですから

私にとって 胸の奥にある故郷の里山の風景はだいたいがこのようなものです

もう二度ともとに戻る事もないし この村に子供達の声が響く事もありません

村は再生不能になり 近い将来死んでしまいます

あとは ここを切り開いた何百年も昔には原生林であったように 元の姿に戻っていくでしょう

田舎で暮らす事は 並大抵の事ではありません

私もこの里山を捨てた人間ですから 消えていく村を嘆いても仕方がありません

もう 思い出の中だけの小さな里山なのです

実家の田んぼ 作らなくなったので草の天下です 
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空き家になっている家のサザンカ
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私の実家も 近い将来空き家となるでしょう
そして ここに来る事もなくなってしまうでしょう 感傷的になっても仕方がありませんし何の意味もありません

今年の紅葉がとても美しいので つい写真に撮ってしまいました

実家に泊まった夜は まさに銀色のベールの夜でした
真夜中に外に出ると 山も田も 庭の木も 明るい月に照らされて 家の黒い屋根の影がくっきりと土に落ちていました 静かな静かな夜でしたよ
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by hanarenge | 2010-11-24 13:49 | 心模様


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