心の万華鏡  

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2015年 09月 06日

Elvisの事 3

Elvisが伝説となったのは、やはり彼が不幸だったからだと思う。

世界一の名声を手に入れた彼は、しかし、世界一の孤独をも引き受ける事になったのだ。

貧しかった少年時代、彼は母親に楽をさせたいと願った。

家も車も母親に買ってあげたかった。

そして彼は、あるか、ないか、解らない自分の才能を信じて、ひたすらに邁進したのだ。

その道のりは、険しく厳しく孤独なものだったろう

彼は裕福にはなったが、幸せではなかった。

何も不幸でいいとは言わない。しかし、彼が多くの人を引きつけるのは、彼の歌声と生き方が、心にしみ入るからだ。

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メンフィス生まれのカリスマ・シンガーがポップ・センセーションとして躍進した年(1956年)を中心に1時間余りのドキュメント番組のDVD Amazonより引用

この中でElvisは言っている。
「いい子と出会って家庭を持ちたいな、その子といればきっと世界中何処にいても孤独を感じないですむのだ」と

ドイツで出会ったプリシラ・ボウリューは、運命の人だったのだろうか?。
まだ14才のプリシラと24才のElvisは、人の噂はともかく、当人同士は純愛気分だったと私には思える。

彼の事は、良い事も悪い事も溢れている。

「メンフィスマフィアの証言」には、俄には信じがたいような事も書かれている。
(中には腹を抱えて笑える話もあるし、そんな時にはメンバーとエルヴィスの友情と愛情が感じられてちょっと嬉しい)

まあ、ウソも真実も色々と混ざっていると思う。

21才のデビューから、どこに行っても騒がれ、囲まれ、そして大人たちからは徹底的に虐められた。

そんな彼が、心を許して生身の自分を見せる事ができる人は限られている。

Elvisが本当の意味で裸の自分を見せられたのは、母親だけだったのかもしれない。

その母親がいない今、プリシラが彼を支えたと信じたいのだけれど。


人気が出るに連れて、本当の自分を出せなくなり、いつか、自分が何者かもあやふやになっていったのだろうか。

夜と昼が逆転した生活。とんでもないほどの浪費癖。儲けるのは彼でその彼が使うのだから誰にも口出し出来ないのだけれど。

内面はさておき、ハリウッドで映画を録る数年間は、彼は自分の才能を垂れ流しで浪費している様にも見える。

何か内なる危うさを感じながらも、プリシラと結婚して、翌年には父親となったプレスリー。

やっと退屈な映画の契約も終わる時が来る。

そして、68年カムバックスペシャル NBCからオンエアされた、「ElVIS」は素晴らしいものだった
ファンたちはさぞ満足し、世間に対して鬱憤を晴らした事だろうと思う。
ネット時代の今は有難い事にユーチューブにアップされたELVISでそれを観る事ができる



34才の彼は音楽的にも人間的にも円熟した魅力に溢れている。

これを皮切りにElvisはステージに戻って来る。

いや、凄まじいとしか言い様のないコンサート活動に入っていくのだ。

パーカー大佐は商売人だ、売れる時に売ると言う方針だし、Elvisもコンサートに生き甲斐を見いだしただろう。

だが、家庭はどうだったろうか。

コンサートでいつも不在で留守を守る家族は顧みられない、いや、心では大事にしたいと思っていても人間は中々改まって言葉にはできない。
Elvisは南部の男だ、南部では女は家庭を守るのが当たり前という風潮だ(彼の生まれた時代や育った時代)
彼は外で遊ぶ、しかし、プリシラは家で待っていなくてはいけない。

マッチョを気取るElvisは、メンフィスマフィアの手前もあって、中々、プリシラとの時間を持とうとしなかったのかも知れない。本来の彼は、もっと繊細で優しい男だと思う。

Elvisの不在はきっとプリシラにはとても応えた事だろう、淋しさから外に目がむいた。

お定まりのコースだ、男と女の間は金持ちでも貧乏でもそう大差がない。

離婚を切り出されたElvisにしてみれば、青天の霹靂、信じられない思いだったと思う。

贅沢をさせているし、世界中の女性の憧れ(まあ、ちょっとオーバー?でもそれに近いよね)の男の妻なのに。。。。。お前は何でも持っているじゃないか。

いやいや、そうじゃない、もっと私を見てほしい、私の事を思ってほしい、メンフィスマフィアと貴方を共有するのにもうんざりだし、それにどうして、毎回、浮気ばかりするのよ!と言うような所か。
Elvisは寂しがりやだった、だから、回りを知っている人で固めたのだ。
それと、Elvisの事を書いた本を読んでいて感じるのは、彼は、知らない人の前では緊張してしまうような神経質な所も有ったのではないかとも思う。
自分の側には、昔から見知っている人がいると安心したのだろうなと。

メンフィスマフィアの面々は経済的にはElvisに全面的に依存していただろうし、お金をもらいたがる大勢の身内もいただろう。
歌さヘ歌っていればご機嫌だった男の子は、いつの間にか一族の稼ぎ頭になって、大勢の人の面倒を見なければならなくなったのだ。
そりゃあ、ストレスも溜まるよ、羽目を外したい気持ちも解るよ。

しかし、それ故に、その羽目が桁外れだったのだ。

プリシラは、Elvisの破天荒な生き方に疲れ果てたのだろうか。


プリシラと別れてからのElvisは、その生き方が徐々に破滅傾向に向うように思える。

いや実際身体は悲鳴を上げていたのだ。
長年のライトによる目の障害、緑内障で痛みも相当有ったと言う事です
そして、ストレスに寄る過食から来る肥満、深刻な不眠、
高血圧、心肥大 動脈硬化、それを補う大量の薬の乱用と副作用。満身創痍だ。
加えての過密スケジュール。

精神的には、誰にも理解されないという孤独感が増すばかりのElvis、母親を失ってからの虚無感
双子の生き残りと言う罪悪感(彼が生きたから兄が死んだとElvisは終生感じていたらしい)
そして妻の裏切り

もう誰もいないと思ったのだろうか(彼の不行跡が妻の失望を招いたのだけれど)

私は、彼は、ストレスを減らす為のメンタルケアを受けるべきだったと思う。
母親を無くしたときから受けるべきだったのだ。
が、当時は、そんな事は一般的ではなかったのだろう。

弱音を吐く事は、プライドが許さなかったのだろうか だとしたら余りにも悲しい。

彼の突然死と言う結末を知っているから余計にそう思ってしまうのかも知れないが。。。。。
晩年の彼の生活は、緩慢な死への道程のように感じる。

プリシラがいみじくも言っている。
彼には、母性本能を刺激する所が有る、Elvisの為に闘って、彼を守って死んであげたくなると。

彼には、もの凄く傲慢な所も、幼児のように無垢な所も有ったと思う。

映像にも残っているが、彼が見せるあの笑顔もそうだ。
プリシラも、彼の秘密の恋人たちも、多くのファンも、あの笑顔が見たいのだ。

彼の孤独感を思うと、胸がふさがれる思いがする。

しかし、この生涯を通じて感じた孤独感こそ、彼を「エルヴィス・プレスリー」たらしめた、大きな、そして確かな原動力なのです。

「その大きな原動力は不幸な生い立ちにある
貧しくハングリーであったからこそ、かれは人一倍大きな夢を抱かえ、あるかも知れない才能を自分一人信じて、その夢に向って歩いて行った。
その旅はひどい重荷を背負ったものだった。
だが、逆境にあればあるほどいっそうパワーを持ち世の中を変える力を蓄えていった
その事はこれまであまり語られる事はなかった。
後年の彼は貧しさから脱却する事はできたが、不幸から逃れる事はできなかった
その不幸せで有った人生が、ちょうどマリリン・モンローがそうであったと同じ様に、その死後いつまでたっても、いやますます強く人の心を摑んで離さないのだ。
それは彼の背負った人間的苦悩が、挫折し、苦しむ人の心を癒すからに違いない。
エルヴィスと言う人物を通して、アメリカと言う国とそこに住む人々、そしてアメリカが目指そうとしたもの。その為に傷ついた多くの人々の事を知る事ができる
通り一遍でないアメリカを知る一つの手がかりが、彼の人生、なかんずく彼の死後のさまざまな事象に色濃く浮き出ているのである」エルヴィス・プレスリー 時代を変えた男 東 理夫 著作より引用 

エルヴィス・プレスリーを知る上で、大きな道案内になる本です。


Elvisが亡くなる前のコンサートツアーを観ると、胸が熱くなる。

太ったElvis、ライトが熱くて辛そうなElvis、もう以前のようにしなやかに動く事もないElvis。
もう昔のように格好良くはないElvis。
だけど、彼は心から熱唱して、あの無垢な笑顔を観客に見せている。
ステージの上で、彼は、生きていると感じているのだと思う。

そのElvisに泣けてしまうのだ。

(全体に追記しました。)
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by hanarenge | 2015-09-06 18:06 | Elvis | Comments(0)