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心の万華鏡  

さゆり

「さゆり」 映画で少し前に話題になったから ご存知の方も多いだろう

アーサー・ゴールドンが書いた「Memoirs of a Geisha」である

ヤーコプ・ハールホイスが、Geisha さゆりの数奇な生涯をメモワールとして口述したとの事で
この物語は始まる。

千代は、丹波から京都の祇園の屋形へ、売られ、住み込みの仕込み子としての生活が始まるのだ。

千代の売られた屋形には、例えて言うならば、牡丹の花のように艶やかで美しい、先輩芸妓、初桃がいる。
今を時めく、一番の売れっ子である。

ところが、この牡丹のように美しい姐芸妓は、「初桃さんなら、猫みたいなもんや、日なたに寝そべってほかの猫がいてへんかったらご機嫌・・・」

「うちが六つで、初桃さんが九つの頃から知ってますのや、ずっと長いこと、えげつない悪さを、見た後やったら、この次の見当つけるのは、容易なこっちゃ」
さゆり第一巻より抜粋

豆葉という、先輩の芸妓の口から、千代に言われた初桃評である。

初桃は、青い灰色の目をした、千代が、必ず自分より売れっ子になると思い、徹底的に排除しようとする。

あまり期待されなかった、仕込み子の千代の、磨けば宝石のようになる美しさを、皮肉な事に、初桃は、屋形の誰よりも 認識していたのだろう。

やがて、豆葉という、何もかもが揃った、第一級の芸妓に、見込まれた、千代は、初桃の邪魔を何とか逃げ切り、豆葉の妹分として、舞妓としての道を踏み出す。ここまでが、第一巻。

花街の、屋形 おかあさん そこのお抱えの芸妓や舞妓 お茶屋の女将さん等の人間模様
姐芸妓との固めの杯、店出ししてからの、お座敷回り 地位も名誉もある男たちの昼間とは違う顔
昭和の初期ではあるが、いきいきと そして、祇園で生きると言う事がとても詳しく、丁寧に書かれてある。

お座敷での様子、芸妓や舞妓の嫉妬 確執 とてつもない大金が動く、「水揚げ」

現在の祇園に代表される京都の花街は、千代がいた時代とでは、大きく変わり、もっと、明るく、以前のような、澱んだような暗さは無い。

その澱のような、暗さの中に、美しい花が咲いていたのではあろうが・・・・

しかし、外からは、うかがう事のできない、花街の格子の中の世界は、悪いとか良いとかではなく、おそらく今もその深いところでは姿を変えずに、流れているであろうと思うのだ。

それであるからこそ、今も、花街は花街として存在できるのであろう。

この本の中の話は、祇園で実際にあったことであろうと、私は思っている。

祇園には、大勢の「千代」がいて、大勢の、「初桃」が、「おカボ」や、「女将さん」がいたのだろう
そして豆葉も・・・・・・
沢山の絵をはめ込んで、この物語は、一つの話となったのだろう。

ばかばかしいほどの大金をおしげも無く投じる、男たち その競争心を巧みに煽る花街の女性たち

男たちは、お互いに負けじと争うが、かと言って、芸妓や舞妓を、本心から欲する人は少ない
言わば、高価な置物、あるいは、自分の持ち物として、扱う。
そこに、色街に暮らす女たちに対する、無意識であろうとも、厭らしい差別感が滲む。

それを、百も承知の花街の、女たちは、しかし、幾重にも重ねた美しい着物や、化粧の下に巧みに心を隠し、お座敷からお座敷へと蝶のように舞い踊る。

意地悪な芸妓にも、それなりの訳もあり、また、いじめから守ってくれる姐芸妓にもわけがある。

少しずつ、慣れてきて、段々と洗練され、気の聞いた一言も言えるようになり、気働きができると言われ やがて、贔屓も付いてくる。

可愛らしい(かいらしい)舞妓は、祇園の街に、いつの間にか、自分の足で、すっくと立っているのだ。

私が、一番気になるのは、さゆりよりも早く、仕込みで入り、ただ、さゆりへのあてつけと対抗で、初桃の妹分にされ、舞妓になった、不運なおカボのことである。

私は、この物語が、ノンフィクション、あるいは、少なくとも、一人の芸妓をモデルにしていると思っていた。
しかし、これは、完全なフィクションで、ヤーコブ・ハールホイスも架空の人物である。
全くのアメリカ人が、英語で書いた、詳しい、リアルな、花街の物語なのだ。

祇園の富永町の屋形(置屋)がほとんどの物語なのだが、その昔は「美しく着飾った舞妓 芸妓が右往左往する中心地区」であったそうだ。さゆり 訳者後書きからの抜粋
今は、その面影はすっかり変貌しているが・・・・・・・

物語の中に白川や辰巳橋 八坂神社 四条通り 先斗町など、知っている場所が出てくるのも、面白い。

私としては、読み終えて、映画を観たいとは思わなかった。スチール写真で何点か見たのだが、どうも、小説からイメージするものとは、程遠い感じがする。

小説は完璧な京都弁で、衣装や背景もしっかりと書き込んである。

もちろん完璧な京都弁は訳者小川高義氏の力量であるが。

ここまで、京都の祇園の世界に詳しい外国人がいるのだと、改めて、妙に感心してしまった。

上巻と下巻のうち、上巻のほうが、圧倒的に読み応えが、あると思う。
下巻の中では、延さんとさゆりの、会話が、しんと心に落ちてくる。

この本を読んだ後で、もう一度観たいと思ったのは「おもちゃ」と言う映画である。

ご参考まで映画 さゆりの公式ページです。
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Commented by ぐ~ at 2007-06-10 07:33 x
「さゆり」は映画で見て、予想通りがっかりしました。
娯楽のアメリカ映画と割り切ってみないといけなかったようです。
でも、映像もきれいじゃなかったので、あれを花街の世界と思われるのが嫌だったなぁ。
原作はそんなにいいんですね。
Commented by hanarenge at 2007-06-10 10:01
ぐ~さん♪おはようさんです
監督の意気込みとは、裏腹に、評判はあまり良くないようですね。
あの、映像は、アートだそうで・・・外国から見たら、あれが限界でしょうか?。

キャッチコピーは、「日本が嫉妬する」でしたっけ。嫉妬どころか、呆れ返ったと言う所でしょうか。
ぐ~さんが言われるように、割り切ってみないと、いけませんね。
原作は、細かい事まで書き込んであるので、私としては、面白かったです
Commented by kotapi_1 at 2007-06-10 21:24
映画も見ていないし、本も読んでいません(~_~;)
そういえば、最近図書館からも遠ざかっているし・・・(本は買うものから図書館で借りるものになっています(^^))
「さゆり」面白そうですね・・・本のほうですけど、今度図書館に行って探してみます。

Commented by hanarenge at 2007-06-14 19:38
タンポポさん♪お返事が遅くなってすみません
私もそうですよ^^最近は、図書館で借りるのがもっぱらです。
もう一年越しで予約待ちの本もあります・・・・待ちくたびれました。
「さゆり」は、絶対に本のほうが面白いです。。。と断言する私でした。
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by hanarenge | 2007-06-08 23:08 | 映画あるいは読書&ドラマ | Comments(4)

 心模様の一こまを・・   れんげそう