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心の万華鏡  

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2007年 05月 25日

星砂物語 (珊瑚の夢・・・・)

タンポポさんのブログより

星砂物語 (珊瑚の夢・・・・)_d0027244_1272690.jpg

あなたは 知っていますか
遠い遠い南の海 真っ赤なお日様が トックン トックンと 沈んでいって
海は 金色に燃え上がるのです

あなたは 知っていますか 
銀色のお月様が しずしずと 昇ってきて 海は 銀の薄いベールをかけたように
輝くのです

さあ これから 南の海の 珊瑚の夢のお話を聞きに行きましょう

ゆらゆら ふわふわ しゃらしゃら 小さな 小さな 珊瑚の子供が海を漂っています

珊瑚の子供は 本当は もっと もっと 遠くへ行きたいのです
今漂っている向こうには 青く青く透き通った水がいっぱいあって その向こうまで行ってみたいのでした
そこは 海の底が すとんと落ち込んで 急に深くなっているのです
その深い海のそこから 夜になると 赤や青や もっと透き通った色の不思議な生き物たちが ゆらゆらと浮かび上がってくるのです
僕も あそこまで行ったら 綺麗な色のゆらゆら揺れる体に成れるかもしれない
珊瑚の子供は そう思って 一生懸命に 深い深い海の側まで行こうとしました

海の水は そんな珊瑚の子供の願いを 無視するように 大きな波を送ってきて
珊瑚の子供は うんと陸の近くの岩のある所まで戻されてしまいました

もう一度・・・そう思って 前に踏み出そうとしたとき 珊瑚の体はしっかりと
黒い岩にくっついてしまったのです
もう どうやったって 離れません
珊瑚の子供は恨めしそうに 自分の足元を見ました
そうして それから あの深い青い水を 悲しそうに見たのでした

珊瑚は そこで大きくなるしかありませんでした
私たち 陸で暮らすものには とても長い時間が流れたように思います
それでも 珊瑚はまだ ほんの少し 大きくなっただけでした
珊瑚の時間は陸で暮らす生き物とは 違うのです
一年は365日 でも365秒が一年の生き物もいれば 3650年が一年の生き物もいるのです
珊瑚は 何回も 深い海の底から現れる 不思議な生き物を見ました
珊瑚は 何回も 真っ赤なお日様を眺めました
夜のお月様の 薄い銀のベールの海も 見ました お月様が昇ってこない夜の海は暗くて
生き物たちも 静かにしています
でも そんな夜には 海の水が 引いていって 珊瑚のすむ岩が少し空に近くなったように思える時に 金色に光る小さな星を見ることが出来ました

星たちは 珊瑚の海を見下ろしながら楽しそうに キラキラと瞬いて 笑いあっています
ああ 空には あんなに綺麗な光る体を持ったものがいるんだなあと 少し哀しいような寂しいような気持ちで 珊瑚は 水から透けて見える空を見ながら思いました

気がつくと 珊瑚はとても大きくなり 周りには 自分と同じようなたくさんの珊瑚で
黒い岩はすっかり賑やかになっていました
海は優しく波を送って 珊瑚の周りには 綺麗な魚たちがヒラヒラと嬉しそうに泳いでいました
珊瑚も 大きくなったので もうあの深い青い水のそばまで行きたいと思った事や
暗い夜になると 湧き上がるように 深い海の底から 上がってくる 不思議な生き物たちと 遊びたいと思った事は 思い出す事もなくなりました
珊瑚は 幸せでした

ある日の事です 海は朝から不機嫌で 怒っていました
何だか濁っていて 大きな塊の水が 珊瑚の岩にどーんとあたるのでした
魚たちが逃げていくのが見えました 海草がくるくると回りながら流されていくのが見えました
黒い大きな塊が 押し寄せて 岩を殴りつけるのでした
そんな荒い海は やがてもっともっと怒り出し 珊瑚たちは 驚いて目を閉じてじっと海の怒りが静まるのを待っているのでした
あっと思うまもなく 珊瑚は自分の体が 乱暴に岩からもぎ取られたように思ったのでした
黒い水は 珊瑚を捕まえて くるくると回しながら あの深いところまで連れて行ったのでした
最後に珊瑚は やっとの思いで後ろを振り返り自分の岩を見ました
さようなら さようなら ほかの珊瑚は 必死に岩にしがみつきながら流されていく珊瑚を見送ったのでした

珊瑚は 次に目を覚ましたとき 懐かしい黒い岩の上ではなく 海の中でもなかったのです

いったい ここはどこだろう 僕はどうなったんだろう
ざぁざあーざざーと波の音が聞こえます 冷たい水の変わりに薄い紙のような空気が
珊瑚を取り囲んでいました
周りには 白い白い砂がいっぱい それは 丸いのやとがったのや 様々でした
星砂物語 (珊瑚の夢・・・・)_d0027244_12132180.jpg


やがて 珊瑚は 波の音を聞きながら眠ってしまいました
どれくらいの時間が経ったことでしょうか 誰にも分かりません
珊瑚は自分の体が細かく小さくなっているのに気がつきました
痛いことも苦しい事もありませんが 淋しい気持ちがずっとありました

ある日 小さな ささやき声がしました やあ 君もかい 僕たちもここで欠片になったんだよ
珊瑚が目を開けてみると 白い白い星たちがいるのでした
ふと気がついてみると 珊瑚は 小さくなって あの遠い昔 黒い岩の上から眺めた 空にいる金色の星に 似た形になっているのでした
星砂になったんだよ 丸い形の珊瑚がいいました
お日様の星になるものと 星の砂になるものがいるんだよ
珊瑚は遠い昔の自分の夢が 一つだけ 叶ったことを思いました
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やがて 珊瑚は 綺麗な星の形になり ある日 この砂浜へ遊びに来た人に拾われました

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珊瑚は思いもしなかった長い旅に出て 綺麗なぴかぴかのガラスの瓶に入れてもらいました
そこは海の見えない 緑色の葉っぱがたくさんある所でした
珊瑚の綺麗な新しいおうちには 白い星の砂がたくさん住んでいました

珊瑚は嬉しくなりました だって 南の海を知っているたくさんの仲間に出会えたのですから
珊瑚の夢は 叶ったのです ピカピカ光る星の砂になったのです



こちらにリンクをしてくださっている ネットのお友達のタンポポさんのHPで 西表島の星の砂の記事を拝見しました
それから 膨らませたお話です
掲載してある 写真は どれも タンポポさんにご無理をお願いしてお借りしたものです
タンポポさん ありがとうございました 感謝いたしています

by hanarenge | 2007-05-25 12:10 | 小さな童話


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