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心の万華鏡  

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2017年 11月 11日

蝉しぐれ

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藤沢周平が好きだ

時代劇はほとんど見ない

しかし藤沢周平原作の映画あるいはドラマは観ることがある


地味で真面目な主人公が真っ当に生きていく上で 遭遇するお家の難儀

理不尽 堪忍 忍び難きを偲ぶのはいつも身分の低いものなのだが

そこに作者の厳しいが温かい目がある

蝉しぐれはドラマと映画があるけれど 断然内野聖陽のドラマ版がいい

藤沢作品の中でも代表作と言われるだけあって 素晴らしいと思う

海坂藩のお世継ぎをめぐる政争に巻き込まれ 父を失い家禄を減らされた少年牧文四郎の成長物語だ




お福は隣家の娘 文四郎にとっては妹のようなしかし少し気になる存在であったのだ

父は謀反人として切腹を命ぜられ 

暑い夏の盛り 戸板に父の遺骸を乗せて文四郎は荷車を引く

謀反人よと指をさされ 誰も荷車を押してやろうとする者はいない

坂道に差し掛かり 喘ぎながら荷車を引くが ずるずると下がっていく

いかん!父上を落とすわけにはいかん!

汗をしたたらせながら 必死に荷車を支える文四郎

坂道の上に涙を流すお福がいた

お福は一文字に口を引き絞り 黙って文四郎の後ろに回り 細い腕で荷車を押した

文四郎はお福に助けられて ようやく坂を登り切ったのだ

そのお福が 藩主の奥方様に仕えるために江戸に登ることになったのだ

二人はそれきり会うことはなかった

青春時代は遠く去り 大人になったけれど

明日は江戸に赴くと言う前夜 切羽詰まって文四郎の家に来たお福を忘れるわけにはいかなかった


心のどこかにお福がいたのだ


お福は藩主に気に入られ側室となっていた

この二人が やはり藩主のお世継ぎ問題で再び顔を合わすことになる

お福は密かに国許に戻され 欅御殿で男子を出産する

そのことで騒動があり 文四郎はお福と思いがけない出会いをする

その騒動が過ぎ お福は城奥を取り締まる実力者となっていて文四郎とは直接会うことはなかった

やがて20年という月日が流れた

側室として仕えた藩主が亡くなり

一周忌を前に お福は髪を下ろし白蓮院に入り尼になることに決めたのだ

その前に一目お会いしたい

文四郎にお福からの手紙が届く

遠く過ぎた年月 

隔たった二人に あの遠い記憶が蘇る



by hanarenge | 2017-11-11 00:21 | 映画あるいは読書&ドラマ


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