心の万華鏡  

hanarenge.exblog.jp
ブログトップ
2017年 09月 13日

片思いと初恋は

いつから始まったのだろう

もう古い話だ

都心へ向かう電車は満員御礼

いつもの事だが 明子は舌打ちしたくなる気持ちを抑えて乗るのだ

その日も同じような光景

ウンザリして横を向いた時 真正面の男性の胸に口紅をつけてしまった

明子の後ろの客が電車の揺れによろめいたのだ

明子は押し出されるような格好で見知らぬ男性の胸に顔を埋める姿勢になった

電車はその後大きく揺れて ブレーキがかかった

明子はますます男性にくっついてしまったのだ

グリーンノートとかすかなムスクの清潔な香りがするその人は 明子を守るように両腕でかばってくれた

真っ白いyシャツに口紅をつけてしまったことを謝る明子に 屈託のない笑顔を向けてその人は改札を出て行った

笑顔が印象に残った 目尻にちょっとシワがより それがとても似合っていると思った

一ヶ月後に明子は男性と再会した やはり満員電車の中だった

きっかけがきっかけだけに 二人で顔を見合わせて吹き出してしまったのだ

それから電車に乗るたびに密かに彼の姿を探すことになる

車両もなんとなく暗黙の了解で 口紅事件のあの車両になった

そしていつしか電車の時間が楽しみになっていた

だって あの人も私を見つけてとてもうれしそうな笑顔で やあ 今日は乘っていないのかと心配しましたよなんて言ってくれるようになったんだもの

やがて明子はあることに気がつくのだ

それは ひっそりと心に入り込み ある日突然姿形を伴って 

そしてはっきりと きっぱりと そこに住み着いたのだ

そうしたら もうその人のことしか思わなくなる

毎日 ドキドキして 

でも どうにもならないことは はっきりとわかっている

だって あの人は他人のもの 家庭があるのだ

私のものには永遠にならない

告白なんて夢のまた夢 そっと物陰から見ているような気分なのだ

彼はもう若くはない 私の割り込む隙など皆無だと言って良い


通勤電車で顔を合わして 面白い話をするけれど。。。。。それは。。。。


私は本当の気持ちをとても上手に隠しているから

きっと気がついていない

気がついて欲しいと思う事も もちろんある

だけど その反対に 私の気持ちがもしあの人に知れたら もう絶対に顔を合わせられないと思うことも事実だ

明子は 冷めたコーヒーを飲み干して自分の苦々しい気持ちをごまかす

幾夜泣いたことだろうか 辛いとかいうのではなく なぜか透明な涙が湧き出てくるのだ

そして普段は聞かない むしろ嫌いな恋の歌なんか聞きたくなる

やばいぞ 明子は思う これは本当にもうやばいぞ

早くなんとかしないと私はやばいことになる

この頃は やばい自分を妄想する始末

なんとかこの思いを始末しないと 

まるで熱いトタン屋根の上の猫のように追い詰められて 背中を逆立てているような気分だ

トタン屋根は爪が立たない このままズルズルと落ちていくのか それは絶対嫌だ

どうすればよい?

電車に乗らないでおこうか もっと遅く行こうか

それは。。。。。。いやだ

どっちつかず 宙ぶらりんの気持ちのまま 明子は電車に乗り続けた そして彼と馬鹿話をした

あれから2年 二人は数え切れないくらい同じ電車に乗った

数え切れないくらい話をした

そしていつの間にか 帰りの時間を合わせ 時々途中の駅で降りてお茶をするようになった

もちろん明子は 自分の中の大事な気持ちは微塵も出さなかった(はずだと自負している)

明子は会社の仕事の悩みなど少しづつ話すようになり (まあ それはたわいない話なのだが)
彼は ちょっと眉をしかめながら でも目尻に優しいシワをたたえて話を聞いてくれた

たまに ごくたまには彼が家の話をした

明子は悪いとは思いながら 彼の家庭の話は身を入れて聞かなかった

なんでも知りたいと思う反面 彼の家庭のことなど聞きたくなかった

そんなある日 彼がポツリと言ったのだ

もっと早く会いたかった もっと若いときにあなたに出会いたかったと

明日の天気の話でもするようにサラリと何の気負いもなく繰り出されたその言葉 言わんとするところ

胸の奥がコトリとなった そうして激しい動悸がした

顔を上げたその前に 笑っていない彼がいた (知っていたのね 私の気持ちを) 

しかし 明子は笑ったのだ 大きな声で 少し演技も混ぜて笑ったのだ

笑わなければいけないような気がしたのだ 笑わなかったら どうなる?

今度は誰にも押されずに彼の胸に包み込まれるようになるのかもしれない

それはとても魅力的なことのように思えたが  実際 白状するなら明子はそれを望んでいたのだ
悪魔的な誘惑だ

でも・・・・・・・・

明子の笑い声に傷ついたような ホッとしたような彼の顔

つられて笑い出した 二人であはは あははと笑った

どうもいけないね 照れくさそうな彼は じゃあと言って帰って行った

明子は彼を見送りながら 自分の中で一つ扉を閉めたような気がした

それは寂しいことだけれど その反面 緊張が解けていくような安心感に包み込まれるのを感じていた

明子は少々強引ではあったが なんとか 自分の気持ちを安全地帯に着地させたのだ

もうやばくない 明子はホッとしていた

そして 明日からは電車の時間を時々は変えようと思っていた

時々時間を変える事を彼にも言おう

彼もきっとそれがいいと思うはずだ

明子の心の中で彼は優しい憧れになったのだ

もう悩まなくてもいい 

そう思うと 急にケーキが食べたくなった

友人に電話をして お茶をしようと誘った

何よ 久しぶりね いい人でもできたの?友人は揶揄った

それが全然よ〜〜〜〜 

明子は弾けるような笑顔で答えていた

雑踏の中を友人と二人で歩きながら 明子は本当に嬉しくて楽しかった 


あれから3年  

明子は明日お嫁に行く

相手の人は寡黙な人だったが 笑顔が良かったのだ 

そしてグリーンノートとムスクの香りがしていた

それだけで結婚を決めた明子だが きっと幸せになれると確信していた

あれから 4〜5回あった電車の彼は そのうち 電車に乗らなくなった

きっと定年退職したのだろう 最後に電車で会った時 そんな話をしていたもの

明子の心の中で 電車の彼は初恋の人のようになった

その人を思うだけで 心が温かくなるような気がする・・・・・・・

明子はもう会えないその人に そっと結婚することを心の中で告げた

私幸せになります あなたもどうぞお元気で ありがとう そしてさようなら

でも でもね 私はあなたをずっと覚えています あなたへの気持ちをずっと覚えています

それが 私にとっての片思いと初恋です

明子は 久しぶりに透明な涙を流した


久しぶりに妄想しました^^ 全開です

少し文章を訂正しました 9/14
だいたい アップすると直したくなるのです ご無礼つかまつった^^

[PR]

by hanarenge | 2017-09-13 22:43 | 作文 | Comments(4)
Commented by captain_spoc at 2017-09-13 23:50
上手い
思わず引き込まれる魅力がある
Commented by hanarenge at 2017-09-14 05:43
艦長さんありがとうございます 妄想劇場にようお越し^^
Commented by MAKO-PHOTOGRAPH at 2017-09-14 18:55
素晴らしい展開と感情の表現ですね。
最後まで息もつかずに一気に読み切りました。
おかげさまで若返った気分です。
Commented by hanarenge at 2017-09-14 20:19
MAKOさん 有難うございます
褒められて うれしいです
妄想に拍車がかかりそう 爆
名前
URL
画像認証
削除用パスワード


<< 遠かった ピロシキ      知ってますか 思案橋ブルース >>