2017年 05月 03日
小学校は 分校へ行った ちいさな分校は たった二つの教室 複式授業だった 低学年は複複式? 1年生から3年生までが一つの教室 4年生と5年生がもう一つ 休み時間の遊びは ほとんど全校生徒参加だった 何せ人数の加減もあるんですよ 6年生になると 6キロくらい離れた本校通学が始まる もちろん1年生から 何かあるたびに本校まで歩いたが 毎日ではなかった 6年生は毎日 雨も風も日照りも雪も関係のない 山道通学が始まる それは当然のこととして生徒に受け入れられていた 小学校と中学時代の山道通学のことなど書いてみます 毎朝友人と待ち合わせて 山道を下る そしてそれは 移り変わる季節をたっぷり味わうことでもある 野いちごが真っ赤に熟れて 私は躊躇なくそれを摘んでは口に入れるが 真面目な友人は学校の行き帰りに物を食べてはいけないと言う規則に縛られて 私に文句を言う 私は私でそんな彼女に生返事をしながら ありったけのスピードで野いちごを食べつつける なんてったって美味しいんだから 買い食いじゃないんだから 道にあるんだから 食べたいんだから 甘いんだから とうとう彼女も食べ出すのだ バナナの木を横目に見て(バナナはならないがこの葉で押し寿司をするのだ バショウとか言っていたように思う) 道を下ると ショウジョウバカマが咲いている 毎年増えもしないが減りもしないで 変わらずに可憐な花をつけるこの植物が私は大好きだった 道はどんどん下り坂 杉の山の中の一本道を下っていく 空気は少しひんやりとして 土と苔と木の匂いがしている 友人とのおしゃべりは果てしなく続いている 夏には蜘蛛が巣を張るのでそれが苦になった 登下校の時にベタッと顔にくっつかれてはたまったものではない 私は蜘蛛が大嫌いだ だから友人と順番を決めて 木の枝で払いながら歩くのだ 夕方は蜘蛛が巣をせっせとはるから、暗くなってもしっかり目を凝らさないといけない 毎日巣を張り替える種類の蜘蛛が山道にはかなりいる そいつらがせっせと精を出して家を作るのだ でも こっちとしてはそんな事にかまってはいられない 顔や服につくのは嫌だし たまに蜘蛛まで付いてくる そうなったら一大事 暗い山道に私の悲鳴がこだまする 朝は朝で やっぱり壊れかけた蜘蛛の巣が残っている 油断は禁物 一度など大急ぎで山道を駆け下りる私のお腹のあたりの高さに ジョロウグモの巣と彼女(大きかったからメス)がでんといたことがある ものすごい勢いで急ストップ 泣きそうだった その朝は日直で私は早く家を出たから 一人の登校だったのだ その辺の草を用心しながら手にして 思い切って巣を払った 彼女は??何と!!草を伝わって私の手の方へやってきた!! きゃああああ 思いっきり草を下の田んぼへ放り投げた私 タッチの差で彼女も奈落へ ザマアミロ!! 暗い夜道に光が尾をひく 翡翠のようなその色はホタルだ 友人の髪に止まったこともある 綺麗な髪飾り 私は見とれてしまった 分校の下まで来ると山道は途切れて大きく空が開けてその下に水田がある ホタルは水田の上でたくさん 舞っている それは何と美しい光景だったろう 翡翠の帯があっちにもこっちにも尾を引いて消えていく 私と友人はものも言わずそれを眺めていた 光は弱くなったり強くなったり またたいたり いろいろな表情を見せてくれるのだ ホタルの季節が過ぎたら ありがたくない事にヤブ蚊の襲来も始まる 竹藪の中を通ると必ずヤブ蚊が団体でやってくる いやはや今年初めての洗礼 痒いのなんのって!!! 用心してあちこち叩いても 必ず噛まれた いや血を吸われた 血を吸った蚊を叩き潰すと 後で猛烈に痒くなる 毎年の恒例だ それでも友人と私はおしゃべりを続ける 毎日会って毎日山道を歩くのだが 話は後から後から湧いてくるのだ やがて夏休みも終わり 二学期だ 空気も冷たくなって日も短い 真っ暗になった山道は まるで何かが口を開いているかのようだ 満月の晩 道は白く光り 空は冷たかった 月の明かりになれた私の目には今から入っていく山道がとてつもない闇の世界のように思えたものだ 少しの物音がまるで何かが待ち構えているように思えたり この世のものではない者が潜んでいるように感じたり おっかなびっくりで山道に入っていく私のうなじがぞわぞわした 怖かった ところが友達と二人だと平気なのだ もうどんなことも怖くも何ともない 一人だと想像力が果てしなく広がってしまうのかもしれない 雪が降ったらもう大変 滑りやすい山道は用心がいる 一度など ホタルを見た田んぼの上から カバンだけ先に放り投げたことがある その年は雪が多くて 深かった 細い道はバランスが取りにくく 滑ると下まで転げ落ちそうだったから 友人と熟慮の上 先に通学カバンを落とそうと しかし カバンが途中で口を開けてしまい 教科書 ノート 筆箱 果ては弁当まで出てきた カバンが下の田んぼに着地するまでに それらのものは カバンから飛び出して 放物線を描きながらあちこちに落下して行ったのだ もう 笑った 笑った お腹が捩れるとはあのことだろう いまでもその光景を思い出すと笑えてくる 友人はこれも笑いながらあっけにとられたように 落ちるって思わんかったと ちゃんと閉めてなかったら 落ちるわ これは中学時代 山道が尽きたら自転車通学なのだが その道も雪で埋まっている だから自転車は押していく 当然遅刻 でも仕方がない これが当たり前 そんな時代でした とにかくこうして書いていると 鮮やかに蘇ります あの山道の匂いまでしてくる気がします 季節毎に違う光景 季節毎に変わる山道の小さな事件 私の子供時代が目の前を横切っていきます スキャンしたら故郷の様子はわかりますが 写真はあえて載せません どうぞ山道を想像してくださいな
by hanarenge
| 2017-05-03 21:45
| 幼い頃の・・・
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