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心の万華鏡  

ちょっぴり切ないさようなら

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昔、昔の事です。

小さな山の中の村に、これまた隣の山の小さな村からお嫁に来た人がいました。

新しい住まいとなる村は、その人の住む村から山道を、とことこ歩いて峠を一つ超えた所に有りました。

杉木立の中を抜けて、山の中腹から見下ろしたら、村中の葛屋葺きの屋根がお日様に光って見えました。

春は山桜が村の中にも山の中にも咲いて、まるで村中が柔らかい陽射しに包まれたようでした。

夏は、薄荷色の風が村を吹き抜けて、露草が朝露をいっぱい含んで咲きました。

秋は野も山も、紅葉で錦に染まった美しい衣装をまとった様に見えました。

冬には、真っ白な雪景色が広がって、田んぼや畑は静かに眠っていました。


悲しい事もありました。辛い事も有りました。
でも、毎日、毎年、決まった様に農作業をして良く働きました。
この村で、農業に励み、子供たちを育て、年老いた人を見送り、そうして真面目に生きてきました。

やがて、子供たちは大きくなり、皆、外の都会へと出て行きました。

旦那さんを見送ったら、大きな家に独ぼっちになりました。

近所のお家も似たり寄ったり。

若者の姿は村の中には有りません。賑やかな声も聞こえません。

何百年も続いた村は静かに静かに、閉じられようとしています。

今年92才の私の母は、60年以上住み慣れた村を後にしました。

もう二度とあの家で暮らす事は有りません。毎日見上げた大きな黒い梁ともお別れです。

私の母と同じ様に、いえ、それ以上に歳取った家は、静かに母を見送りました。

母は、生まれて初めての都会での生活を今年から始めます。
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Commented by happykota at 2015-01-12 17:31 x
こんばんわ

おかあさま永い間お疲れさまでした。
都会の慣れない生活、まことに心細いことかと思いますが。
家族みんなのぬくもりでしっかりと包んであげてくださいね。
Commented by nakarahanjaku at 2015-01-13 20:39
そうなんですか。深く深く馴染んだお家との別れは辛いでしょうね。
はやく都会での新しい暮らしに楽しみを見つけてほしいものですね。
Commented by hanarenge at 2015-01-14 17:41
happykotaさん。
有り難うございます。
時代の流れとでも言いましょうか。限界集落では高齢者の一人暮らしは中々難しいものです。
本当はここで生を終えたいのが本音ですが、もう90才を超えて来ると、それ以前に生活全般が無理ですね。
コンクリートだらけの都会ですが、致し方有りません。
母に温かいお言葉を有り難うございます。
Commented by hanarenge at 2015-01-14 17:48
namazuさん。
有り難うございます。
何回も屋根を葺き替え、最終的には萱の確保や屋根葺き職人の欠乏などで、萱の屋根ごとトタンで覆うと言う事になりました。
そうやって、メンテナンスをして住み続けた家ですが、とうとう置いてきぼりに。。。。
そう遠くない将来に解体する予定です、勿体ないと母は言います。
気持ち痛いほど解ります。。。。。
水も空気も違う都会暮らしですが、まあ、母は馴染んでくれると思っています。
母に温かいお言葉を有り難うございます。
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by hanarenge | 2015-01-09 19:42 | 心模様 | Comments(4)

 心模様の一こまを・・   れんげそう